週刊 5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α 44/99

記事タイトルにひかれて初めてこのページをご覧になった方は、こちらを最初に御覧ください。

  1. 『ドン・ジョバンニ』福山庸治
    『マドモアゼルモーツアルト』の後に描かれた作品で、こちらはモーツァルトが作曲したオペラ、ドン・ジョバンニをほぼそのまま漫画化したものである……が、それはあくまで基本ストーリーの部分だけだ。
    主人公ドン・ジョバンニはサムライとして描かれている。では舞台は日本の江戸時代なのかといえば、そうとも言い切れない。ドン・ジョヴァンニの従者レポレッロはなんとロボットである。で、ロボットであるのに江戸の町人風の着物を着ているのだ。たしかに描かれる街並みは江戸時代風、主人公以外の脇役も江戸時代風の衣装を着ているけれども、物語早々にドン・ジョバンニに寝取られそうになるドンナ・アンナは和服ではなくドレスを着ている。つまり和洋入り混じっているうえにロボットまで登場する始末。
    なんともまあ作者のやりたい放題、無節操に描かれているかのようにみえるけれども、それ故にか物語全体の雰囲気は軽快で、軽やかで、おそらくは計算され尽くした結果の無節操なのだ。それでいて物語はオリジナルとほぼ同じ展開をしていく。
    通常ならば悲劇終わるこの物語は、その一方で悲劇か喜劇か論議されることもあるだけあってか、福山庸治はラストで独自の着地地点を目指す。実に憎めないドン・ジョバンニなのである。
    そしてこの作品においてもコマ割りと構図でもって音を操る技は冴えている。例えばドン・ジョバンニが耳元で大声を出され、耳がキーンとなり何も聞こえなくなってしまうシーンは一見の価値がある。読んでいる此方側も本当にキーンとなり音が消えるのだ。もちろん実際にそうなるのではないのだが、そう錯覚させるだけの力がある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました