PEPPERと山田卓司

Pepperという言葉を聞くと最近だとソフトバンクのPepperを思い浮かべる人が多いと思う。もっとも胡椒を思い浮かべる人のほうが多いのだろうけれども、僕の場合はたがみよしひさの漫画『PEPPER』を思い浮かべる。
『PEPPER』はたがみよしひさの作品の中で必ずしも代表作となる作品ではないけれども、西部劇であり、たがみよしひさの作品の特徴のひとつである、ひとりのキャラクターを頭身の高い描き方と低い描き方とで描き分ける手法を使わず、八頭身のシリアスな物語かつ、ほとんどスクリーントーンを使わずカケアミ処理を多用するなどといった作画的にみても意欲的な作品に仕上がっている。それでいて、主人公の性格はいつもどおりのたがみよしひさであり、ミステリ仕立ての謎解きやカタルシスに乏しいラストなど、作品としての安定感も保っている。逆にこの安定感がありすぎるからこそ代表作になりきれない部分があるのだが……。
で、もう一つ。
浜松に住んでいる人であれば山田卓司という名前を聞けば、モデラーの方の山田卓司を思い浮かべるだろう。
いや、モデラー以外の山田卓司などいるのか、と思われるかもしれないが、僕にとっての山田卓司はこのモデラーではない方の山田卓司なのだ。ここ十数年、商業誌では作品を発表していないけれども、山田卓司の漫画『吸血鬼にちがいない』は僕の人生に大きく影響を与えた漫画で、というのはちょっと言い過ぎなんだけれども、それでも僕の人生のちょっとだけ影響を与えてそして僕の生き方の指標の一つとなった。
なので、モデラーの方の山田卓司ばかりに脚光が浴びている状況というのは内心忸怩したるものがある。
Pepperにしろ山田卓司にしろ、メジャーな方ではなくマイナーな方を選んでしまうのは僕の性分みたいなものなので、多分この先もこんな感じでマイナーなものが好きなままなのだろう。

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