結局のところ主人公の持っていた不思議な能力「再上映」はなんだったのかということは明らかにはされなかった。
といっても、それが瑕疵となっているわけでもなく、合理的な説明が欲しかったわけでもない。
中盤で真犯人が明らかになるまでは頻繁に発生していた「再上映」が真犯人が判明したあとは発生せず、途中でいつのまにか途中退場してしまったかのように、かといって、物語の中でいつまたそれが突如発生するのかもわからない宙ぶらりのままになってしまっているという部分が気がかりだったので、その点に関して少ししこりのようなものとして残っているだけだ。
しかし、犯人追求のミステリとして読んでいたら、中盤で犯人が判明し、しかもそこからの展開がそれまでの展開が動であるとすれば静といってもいいくらいに穏やかな展開となり、犯人解明の物語など些細なことなのだと言わんばかりの流れになっていったのは意表をつく展開だった。この辺りの緩急の付け方はうまい。
その一方で、意外な犯人がわかり、その意外な犯人の意外な動機がわかり、そして最終的には主人公と犯人との対決で終わるだろう物語が、その物語の着地地点にて、それまでの物語の全てを背負いきる事ができるのだろうかという不安もあった。
しかし、最終巻を読み終えてみるとそんな不安は杞憂にすぎなかった。天才的な悪に対して、「再上映」という能力によって18年という自分に優位な時間を稼ぐことができながらも、それだけの時間を費やしてようやく対等に立ち向かうことができたという主人公のセリフなどは読んでいてゾクゾクさせられる。
これから始まる外伝も楽しみだ。
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