変身!

表紙だけ見ると、異世界ファンタジーかあるいは異能バトル物のように見えるが中身は全く違う。
「変身!」と潔くそして力強いタイトルが指し示す物語は自分自身を構成する物質を再構成して別な何かに変身することができる能力をもった、しかしそれ以外は平凡な小学生の男の子と、彼が変身するところを偶然見かけてしまった同級生の女の子の日常の物語であり、同時に主人公の男の子がその女の子に振り回され続ける可哀想な物語でもある。
主人公が何故そのような変身能力を身につけることが出来たのかは明らかにはされていない。主人公以外にも変身能力を持つ人物が登場することもあるが、今のところはそういった能力そのものに関わる事件よりも、主人公の思春期の少年が抱える悩みが変身能力と合い重なってこじれてしまう展開のほうが主体であり、切実さという点では後者のほうがより切実さを訴えてくるのでついつい主人公に感情移入してしまう。
その一方で、変身するという現象に関しての論理的な筋立てというものがしっかりと考察されているので、意識を持っていない樹木に変身してしまった主人公が木であることをそのまま受け入れてしまい人間であることを忘れ元に戻れなくなってしまう、という話など、変身能力があればどんな問題でも解決できるのではないだろうかということを否定し、変身することの難しさと危うさ、変身することで何かが解決出来ることもあるかもしれないけれども、最終的には自分自身が成長していかなければ問題は解決しないということが根底にある点で、ビルドゥングス・ロマンとなっている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました