この世から全ていなくなってしまったというわけではないのだが、少なくとも僕の住んでいる地域ではいつからか野良犬というものを見かけなくなってしまった。
野良猫、いやひょっとしたら殆どの場合は飼猫なのかもしれないが、猫に関していえば気ままに一匹で歩きまわっているのを見かけるのに対して、一匹で気ままに歩きまわっている犬を見かけることはなくなってしまった。
かといって、道端に犬の糞が落ちているということもなくなったのかというとそんなことはなくて、仕事場の近くの川べりの細い道には犬の糞がよく落ちている。飼い犬の散歩道でもあるので、心ない飼い主が始末をセずにそのままにしているのだろう。せめて道のうえではなく、道の側の草むらの方に残していってくれるのであればうっかりと踏んでしまうということもないのだが、そんな心使いなど当然のごとくしてはくれない。そんなわけなのでこの道を朝夜に通るたびに、その現場を見かけた時には「落し物ですよ」と飼い主に声をかけようと心に決めているけれども、残念なことにそういった機会は一度も訪れてはいない。
そんな事を毎日考えていると、心ない飼い主に対して怒りもこみ上げてくるのだが、ひょっとしたらこの付近に野良犬がいて、その野良犬の残していったものなのかもしれないと考えると、それだったら仕方ないかと許す気持ちも出てくるし、この付近には野良犬がいるのではないかと淡い期待を抱いていたりすると、まるで絶滅危惧種となっている動物を探している人になったかのようにも感じられる。
だから、野良犬というのもある種の絶滅危惧種とみなしてもいいのではないだろうかと思うのだ。
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