『あの頃ペニー・レインと』という映画がある。
実をいうとこの映画、僕は観たことがないし観る予定もないのだが、題名だけは何故か頭のなかにこびりついてしまうくらいに印象に残っている。原題は『Almost Famous』なので、『あの頃ペニー・レインと』という題名は日本の配給会社がつけた題名なのだけれど、ちょっと味わいのある題名なのではないだろうか。
「あの頃」という言葉が意味するのは時間的に特定できる過去であり、その後ろに「ペニー・レインと」と、末尾の言葉が「と」であることからして、ペニー・レインと名のつく何か、おそらく人、もしくはそういう名のグループ、ひょっとしたら物かもしれないが、それと共に何かをした過去を振り返ろうとしていることを意味している。
言い換えればペニー・レインが過去と結びついているのだ。
僕にとってペニー・レインというとビートルズの「ペニー・レイン」という曲の方を思い出すけれども、これもやはり、僕にとってのあの頃のペニー・レインである。
僕の場合、音楽はその曲をよく聞いた時代や、その時の何か、例えばスザンヌ・ヴェガの曲の場合は「雨の日」という物理的な現象と結びついている事が多い。なので、久しぶりにある曲を聞くと、あの頃とそれに紐づく何かが頭のなかに蘇ってくる。
しかし、何にでも例外はあって、クリストファ・クロスの場合、あの頃が見つからないのだ。
クリストファー・クロスの曲は好きなのだが、少しだけクリストファー・クロスからは距離を置いていたせいかもしれない。好きなくせに初めて買ったクリストファー・クロスのアルバムは『ベスト・オブ・クリストファー・クロス』というベスト盤だったせいもあるだろう。ここぞというタイミングを逃したまま中途半端に聴いていたせいで、あの頃のクリストファー・クロスは何処にも存在しないのである。
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