菜時記　文月/辛亥

統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
いつか妻と一緒に買物に出かけることができる日が来ることを夢見ているが、同時にそれは僕にとって贅沢な願いであることも理解している。
菜時記　文月/辛亥
店に入ると先週と同じく茄子が5本で198円だった。
これは買うしかない値段なので、どの茄子が程度の良いものかを調べてこれなら大丈夫と思うことの出来るものをかごに入れる。
夏場になると毎週のごとく西瓜を食べたいという妻のために1/6カットの西瓜をかごに入れる。糖度は11だが、298円と普段より安い。
レタスがお買い得品でなんと98円。ふだんよりも少し小ぶりだがお買い得だ。
続いて地元野菜のコーナーに行くと、茄子が4本で110円で売られている。少し小ぶりだが、こちらのほうがお得なので、5本198円の茄子の方を元の場所へ戻しに行く。
キャベツは1/2カットで78円。この時期のキャベツは春キャベツと比べるとあまり美味しくはないが、この値段なら文句はない。冬瓜が1/4カットで98円で売られていたので先週のことを思い出して少しショックを受ける。もっとも先週買ったものよりも少し小さいので安いのも納得できるが、それでもこの値段が妥当な値段なのかもしれない。
胡瓜のぬか漬け3本で198円のものをかごに入れる。先週のことがあったので少し躊躇したが、次に行く店で先週と同じくお買い得品になっている可能性はほぼないだろうから、この店で買うのが正解だろう。
弁当を作る必要が無くなって足の遠のいた冷凍食品のコーナーに少し立ち寄る。けっこう品揃えに変化があり、ちょっと食べてみたいものも幾つかあったが、いつか弁当を作らなければならなくなった時に買うことにしよう。楽しみが少し増えた。