週刊 5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α 68/99

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  1. 『地上の記憶』白山宣之
    大友克洋と交流もあり同世代に活躍しながらも寡作で自身の発表した作品を単行本としてまとめることにもあまり興味がなかった白山宣之。
    古くは1979年、新しくは2003年に描かれた漫画が収録されている。むろんそれだけの年月が経過しているので絵柄の変化はあるのだけれども、今の視点で見てもなんら遜色ない作品ばかりだ。
    小津安二郎の世界を漫画に変換した「陽子のいる風景」や「ちひろ」。時代物の「Picnic」と「大力伝」。とくに「Picnic」のセンスが素晴らしく、表紙は60年代のアメリカ風の絵で、日本の戦国時代の話なのにこんな絵を表紙にしてしまうのが素晴らしい。もちろん内容の方も表紙に負けず劣らず素晴らしいのである。
    一番古い「Tropico」は現代の冒険物。もっとも現代といっても描かれたのが1979年なので、今となっては現代とは言いにくい面もある。前編後編というこの本の中では一番のボリュームのある話でありながらも、長編のダイジェスト版のような感じにも感じられるほど紙面が少ないのでちょっと物足りないところが唯一の難点。もっとも昨今のやたらに長過ぎる傾向にある物語に比べれば完結にまとめてしまう潔さがあるので、5巻以内で完結する漫画というくくりの中で取り上げるのにふさわしい漫画だろう。

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