口の中の異なる物体

歯を磨いていたら突然、口の中に何か異物が出現し、コトリと歯に当たった。
もちろん、口の中にそういった異物が瞬間移動してくることなどあるわけもなく、しばらく前からあやしい感じがしていた歯の詰め物が取れたのだ。
以前から少し鈍い痛みも感じていたのだが、もう少し持ちこたえてほしい俺の歯の詰め物と思いながら歯医者に行くタイミングを先延ばしにしていたせいでもある。
しかし、もう少しという言葉がついているので、近いうちに歯医者に行くつもりがあったのかといえば、ここで言うもう少しという期間はおそらく自分が死ぬまでのあいだという意味に限りなく等しいので、もう少しという言葉が意味する時間の長さは人それぞれなのだよなあとも思う。
それはさておき、ここで俺の歯の詰め物といいながらも、歯にしっかりとくっついている時にはまったく違和感などなく、自分の身体の一部という認識であるくせに、取れた途端に感じるこの異物感はなんなのだろうかとも思う。寸前まで自分の肉体の一部として認識していながらも、そこから離れた瞬間に異物として認識してしまうのだ。まるで、来るものは拒まず、去るものは追わずといった感じで、随分とさっぱりしすぎているよなあ俺の身体は、とも思う。
そう思うと、さっきまでくっついていた歯の詰め物も、そういう自分自身の見られ方、つまり、取れた瞬間に異物として扱われることを理解していたのではないかとも思ってしまう。だから、もう少し持ちこたえてほしいとこちら側が思っていても、取れた瞬間に異物として扱われてしまうことがわかっているので、もういい加減あんたへの義理は果たしましたぜ、といった感じで適当なところで取れてしまったのかもしれない。
とかなんとか思いながら翌日、歯医者の予約を取り、ほっと一安心しながら昼飯を食べていたら、反対側の歯の詰め物もポロッと取れてしまった。
お前もか。

コメント

  1. 五十八 より:

    立て続けに2つとも取れてしまいましたか。
    お気の毒様です。
    まあ、2つ一緒に治療できるから効率的でいいかな?
    って、他人事だと思ってテキトーなこと書いてシイマセンm(_ _)m

  2. Takeman より:

    歯医者に行く前にだったので不幸中の幸いでしたね。

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