週刊 5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α 70/99

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  1. 『時間の歩き方(1)』榎本ナリコ
  2. 『時間の歩き方(2)』榎本ナリコ
  3. 『時間の歩き方(3)』榎本ナリコ
  4. 『時間の歩き方(4)』榎本ナリコ
    当初はシリーズ化の予定がなく、三話で終わる予定だったらしく、話そのものも三話目でひと区切りがついていて、この三話分の話が良くできている。だから一巻だけ読めばいいと思ってしまうのは実は間違い。
    続く二巻、三巻で描かれていたエピソードが、最後にきてそうきたかと膝をたたきたくなるくらいにうまいことはまり、作者が希望していたとおりのハッピーエンドに収まる。
    タイムパラドックスとそれに対する対処という点においては、パラドックスを起こそうとすると「時間」によって一時停止(ホールド)と呼ばれる現象が発生し、その時間に干渉できなくなるという設定、そしてその状態でさらに時間の定めたルールを犯すとダブルホールドという状態になり、通常の時間の流れとは離された状態になってしまうというのがこの物語における時間の基本設定だ。主人公達は一巻でホールド状態になっており、そしてそのホールド状態を抜けだそうとするというのがそれ以降の話となるのだが、そもそも主人公の一人、杉田果子がホールド状態になってしまったのは、憧れの先輩を助けようとして、先輩の代わりに自分が死んでしまうところをさらに助けてしまったからで、ホールドを解除するということは杉田果子は死んでしまうということになるのだ。
    そこで作者は、このアンハッピーエンドにしかならない状況をハッピーエンドに持っていくために残りの三巻をかけて作者は時間のルールを新たに設定しなおし、そこからハッピーエンドに至るロジックをつくりだしたわけで、その手間を思うと多少の疑問や不満は気がつかなかったことにしてもいいかなという気になるぐらい綺麗に収束した物語だ。

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