鷲は舞いおりた

ジョン・スタージェス監督の『鷲は舞いおりた』を観た。テレビで放送されたものだったので、カットされたシーンは多く、だったならば広川太一郎の吹き替え版のほうが良かったのだが、生憎と字幕版だった。まあこれに関しては文句を言っても仕方あるまい。
ジョン・スタージェスといえば『荒野の七人』『大脱走』と僕の好きな映画を撮った監督。ジョン・ウェインの珍しい刑事もの『マックQ』もスタージェス監督だった。珍しいといってもジョン・ウェインというと西部劇というイメージが強いが、出演作品のうち西部劇の占める割合は半分程度なので、それほど珍しくもないかもしれない。
話が少しそれてしまったが、『鷲は舞いおりた』はジャック・ヒギンズの代表作『鷲は舞い降りた』を映画化したもので、原作はもちろん読んでいるし、好きな小説の一つだが、これまで映画の方は観たことがなかった。映画の邦題が「降りた」ではなく「おりた」になっているのには題名をつけた人が原作ファンで、できの悪さに憤慨して別物とするためにそうしたという都市伝説もあるらしい。
それはともかく映画の方は、マイケル・ケインを筆頭に、ドナルド・サザーランド、ロバート・デュヴァル、ヒムラー役でドナルド・プレザンスまで出ていて、オールド映画ファンとしては涎が出そうな布陣である。特にドナルド・プレザンスはおなじジョン・スタージェス監督の『大脱走』では良い人を演じただけに今回の悪役は意表を突かれた。
大事次世界大戦末期、ヒトラーはイタリアのムッソリーニ首相の救出作戦が成功したので、ついでにイギリスのチャーチル首相の誘拐を夢想する。ムッソリーニの場合と違って実現不可能な作戦ではあったのだが、運悪くチャーチル首相がイギリスの片田舎に休暇旅行に訪れるという情報と、この作戦に適した部隊がいたことにより、ことが進んでいってしまう。しかし、チャーチル首相がドイツ軍に誘拐されたという事実は存在しない。フィクションでありながらも、SF小説ではないので、あくまでありえたかもしてない嘘はあっても、既にありえた事実は捻じ曲げることはできない。ということ読む前からこの物語、そしてこの作戦の行方はわかりきっているのだが、それでも面白いのはこの無謀とも言える作戦に従事する登場人物たちの魅力ゆえのことだ。
原作を読んだ時に登場人物たちに具体的なイメージはなかったのだが、この映画を見終わって、いつの日かまた、原作を読む機会があったとしたら、その時はマイケル・ケインやドナルド・サザーランド達に頭のなかで再び出会うことだろう。

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