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- 『プロレス狂想曲』ニコラ・ド・クレシー
海外と日本との漫画を比べた場合、手法や表現方法はもちろん異なるのだけれども、制作方法も異なる。週刊連載が主流の日本の場合はアシスタントを使い、いかに量産するかということに比重が置かれる場合が多いが、海外、とくにバンド・デシネの場合は個人で時間をかけて制作することが多い。
『プロレス狂想曲』はフランスのバンド・デシネとして発表された作品ではなく、なんと日本の漫画雑誌に連載された作品だ。さすがに週刊連載ではなく月刊連載なのだが、それでもそれまでに一ヶ月で描く事のできたページ数よりも多いページ数を描く必要があり、このために手抜きにならないレベルで量産させるやり方を模索したらしい。
主人公マリオは小さなピアノ販売店を経営しているちびで頭の毛もかなり薄くなっている男。彼の家系はマフィアの一族であるのだが、彼自身はマフィアとは縁のない生活を送っており、ピアノを弾くペンギンが友達で、彼はいつもマリオのそばにいてくれる。だからささやかで慎ましくも満足した生活を送っている。しかしあるとき、甥っ子でありマフィアのボスであるエンゾから、とある頼み事をされたことからそれまでの平穏な生活は一変する。のだが、物語は、甥っ子と主人公との壮絶な戦い、しかもどう考えても主人公に勝ち目のなさそうな、そんな状況を予測させる場面で終わってしまう。作者によればこの終わり方は最初から意図していた終わり方だそうで、このあと主人公はどうなったのかは読者が想像するしかない。
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