少年シリウスのサイトにて実験的FLASH漫画を連載していた、まがりひろあきの短編集が紙の書籍として出た。実験的FLASH漫画の方は更新が滞ってしまっているのが残念だけれども、FLASHを使った、紙で描く漫画では出来ない様々な手法でもって描かれた漫画は毎回楽しみであり、また毎回笑わせてもらうと同時に、こんなアプローチがあるのかと驚きも与えてくれた。
で、FLASHを使って様々なアプローチをみせてくれたまがりひろあきの漫画ともなると、たとえそれが紙の書籍として描かれていたとしても、期待しないほうがおかしい。
第一話「KILLING SPREE」が試し読みできるので興味のある人は読んでみてもらいたいのだが、基本的にはバカバカしくて、そして登場人物達はあっさりと殺されたり、死んだりする。
第二話は自分が興味を持たないことに関してはまったく無関心な青年が主人公の話。主人公の視点となるコマでは主人公以外の存在は描かれることがなく、背景も真っ黒である。そして、主人公が興味の持ったもののみコマの中に描かれる。この第二話もラストの1ページ手前まで試し読みができて、試し読みの出来ない最後の1ページは1ページまるごと使った一コマである。この実験的な手法で描かれた物語のオチがどんなオチなのか気になる人は買って読んでもらいたい。
というように、FLASH漫画ほどダイナミックではないけれども、印刷媒体上でできる様々な実験的なアプローチが行われており、QRコードを使った漫画などは紙媒体とインターネットを融合させた、なおかつ物語と乖離していない使い方で、一度しかできない方法だけれども面白い。その一方でシリアスでセンチメンタルな話があったり、藤子・F・不二雄を彷彿させるようなSF(少し不思議)な話もある。
密度は濃いのだが、ある種の軽さがあって、そのせいで一冊を読み終えても満足できず、もっと読みたくなってしまうところが唯一の欠点かもしれない。
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