WOMBS

月刊誌連載という形で始まったこの物語も、途中から月刊ペースで描くことが維持できず、描きおろしという形になったのだが、読者としては物語を最後まで描き続けてくれるのであればどのような形でも良かった。
しかし、もともと掲載していた雑誌が休刊となってしまうと事態は一変してしまうもので、月刊誌の名を使ったレーベルそのものも消失することとなり結果、その時点で4巻まで出ていたのだが、残り、出すことが出来るのは1巻、つまり5巻で完結させなければいけない状況となってしまって、読者としてはせっかくここまで順調に来ていたものをと残念に思っていた。
しかし、こうしてめでたく最終巻である5巻が出た。紙面も100ページ近い増量である。
当初の予定よりも短くまとめなければいけなくなった分、物語の密度と速度は早くなった感じがする。もう少しじっくり描いて欲しかったと思う箇所も無きにしもあらずなのだが、テンポを見れば、結果としてはこちらのほうが良かったかもしれない。
異星人ニーバスの体組織を子宮に移植し育てることで空間転送能力を持った女性兵士達の物語がどのようところに着地したのかは、興味のある人は実際にこの物語を読んでみてもらうこととして、予想もつかない場所へとたどり着いた。
自分の胎児以外のものを体内で育てるという話で思い浮かべることが出来るのは、グレッグ・イーガンの「適切な愛」や、オクティヴィア・バトラーの「血をわけた子供」。
「適切な愛」は、事故で瀕死の夫の体を再生するまでの2年間、夫の脳を自分の子宮の中で保存するという話。
「血をわけた子供」は異星人と人類とが共存する惑星で、共存の条件として人類は異星人の卵を体内に入れ孵化するまで育てるという話。ただしここで体内で育てる役目をつるのは女性ではなく男性である。
どちらの話も衝撃的な話なのだが『WOMBS』で描かれる世界もそれ以上に衝撃的だ。
異星人ニーバスが空間転送能力を持っているということがどういうことなのか、そして体内に異星人の体組織を取り入れることで空間転送能力を持つことができた人類はそこからさらに何をしようとしているのか、といった部分まで含めて、人を殺すという戦争の中で唯一生命を生み出すということに一番近い妊婦達の兵士が翻弄される物語は今まで感じることすら出来なかった場所へと導いてくれる。

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