破門

黒川博行の直木賞受賞作。
黒川博行ならばいつかは直木賞を取ってもおかしくはないと思っていたが、読み手としては直木賞を取ったから何か変わるというわけでもなく、安定した面白さは既に保証済みなので、あまり気にはしていなかった。しかし、直木賞を取るのであれば<疫病神>シリーズではないだろうと思っていた。
で、それは見事に外れた。
一般にシリーズものというのはマンネリ気味になる傾向はあるけれども、そのマンネリさが面白いシリーズもあれば、マンネリの部分の面白さとそのマンネリさを覆す展開を常に用意しているシリーズもある。<疫病神>シリーズは後者の方だ。
今回も巻を措く能わずの面白さで、主人公が巻き込まれる事件の面白さはさておき、先の展開が予想もつかない。いや、読んでいけば主人公たちが次に何をするのかというのは予想がつくが、しかし、残りの紙面は常にまだ多く残っている。次の一手は予想がついてもその先は予想がつかない。
そして、今回は疫病神こと桑原も破門、あるいは絶縁の危機に瀕してしまう。
この本を読むまで知らなかったのだが、ヤクザの世界では組織への造反となるような行為をした場合、破門、あるいは絶縁という制裁が行われる。破門は全暴力団社会からの除外という意味合いを持っており、その時点で堅気となるしかなくなる。ただし、一定期間経過後に悔悟の気持ちが認められれば復縁される可能性が残っている。一方絶縁の場合は破門と違って復縁の可能性がない。
で、今回、桑原は破門あるいは絶縁の窮地に立たされてしまう。
そしてそうなった場合、何処へ逃げようが何をしようが、いずれ人知れず行方不明となってしまうことが暗示される。
さて、このピンチをいかにして桑原は乗り切るのかあるいは乗り切れないのか、そしてもうひとりの主人公、二宮は彼を助けるのか見捨てるのか。

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