棺の中は黄色いバラ

作者のあとがきによれば、最初はボーイ・ミーツ・ガールの物語を描こうとしたらしい……のだが、実際に読んでみると、たしかにボーイ・ミーツ・ガールの物語ではあるが、それ以外の夾雑物が異様なまでに多い。というか混じっているものがおかしい。
主人公の両親は主人公を捨ててどこかへ行ってしまい、そしてそこで自分たちの娘を殺してしまう。ころされた娘はおそらくは主人公の妹に当たる存在なのだろうが、どういう関係なのかは主人公視点のこの物語では触れられない。主人公は祖母と一緒に生活をしていたが、その祖母が亡くなり今度は10年以上昔に家出した姉が主人公の元へやって来て一緒に生活をする。しかし、主人公にとってもこの姉の存在は記憶に乏しく、姉という意識すら上がってくることが少ない。
主人公の近所に住むおばさんは主人公に優しいのだが、彼女の息子は犯罪を犯していて現在服役中。しかし、そんな不幸さ素振りは見せもしない。
主人公の教室に新しく転向してきた少年は、主人公の裏の家で生活をすることとなるが、そこに住む男性は保護士をやっているという噂で、そしてその噂通り、転向してきた少年は母親を殺したという過去を持っている。
死というよりも、命を殺すということが登場人物達の生活の中、その根底の部分に流れ続けており、主人公の少女は特に、人を殺すということに対する、いや、自分と他者という関係をうまく認識することができないというふうに解釈できる存在で、転校生の少年に、人の殺し方を押してて欲しいと頼む。かといって彼女が明確に誰かに対して殺意を抱いているのかというとそんなことはない。生きている、そして生きていく、さらには自分と他者というかかわり合いの中で、死というものをうまく認識できないのである。
そんな物語がいったいどんな方向へと向かっていくのだろうか。

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