記憶につて

50年以上も生きているといろいろな記憶が積み重なってくる。
昔の記憶を探しだし、その当時のことを思い出すことも時々ある。
けれども、探しだそうとしても見つからない記憶もまた、沢山ある。
それは忘れてしまっても構わない記憶だったのかもしれない。それとも、記憶というものはたまに掘り起こしてやらなければ消えさってしまうものなのだろうか。
DRAMというものがある。コンピューターに使われたメモリーの一つであるが、このDRAMというものは揮発性メモリーとよばれ、どういうものなのかといえば、たまに通電してリフレッシュさせてあげないと記録したデータが消えてしまうというものなのだ。
記録が消えてしまうというのはやっかいといえばやっかいなのだけれども、時々思い出してやらないと忘れてしまうというのは人間っぽくってなんだか愛嬌がある。
思い出さなければ消えていってしまう記憶がある一方、嫌な記憶や悲しい記憶というものは時としていつまでも心に残っていることもある。そういった記憶は思い出すこともないはずなのに、いつまでも残っているのだ。
それを考えると、思い出してやらなくても消えない記憶というものも確かに存在しているので、忘れてしまうか忘れてしまわないかというのは単に、思い出してやるやらないだけの問題でもないのかもしれない。
そして、僕自身もこんな文章を書いたことなどいずれ忘れ去ってしまうのだろう。

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