菜時記　卯月/癸亥

統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
今の状況から劇的に改善されるということなど望むべくもない。妄想は根強く残ったままであり、おそらくは消えることなどなく、歳をとればその妄想は強化されていくことだろう。
妄想を信じることは妻にとっては、自分と世界とをつなぎとめる唯一の手段でもあるのかもしれない。
だから僕は妻の妄想を受け入れるということをするしかないのだろう。
菜時記　卯月/癸亥
今週もイチゴが安かったので買うことにする。
少し高いほうと少し安いほうの二種類があったのでどちらにするか少し迷うのだが、高いほうは先々週に食べたので、今回は安いほうを買ってみることにする。というのもコンデンスミルクもついでに買ってみることにしたという理由も少しある。
あまり甘くなくっても、ミルクにつけて食べれば大丈夫である。
先週はあまり野菜を買わなかったので、今週は買わなければいけない。
キャベツは春キャベツなのだが、1/2カットにしろ1個まるごとにしろ、小さい。春キャベツだからというのもあるが、キャベツに関しては次の店で買うことにする。
地元野菜コーナーではほうれん草が安い。
ブロッコリーも安いのだが、ブロッコリーは先週のものがまだ残っているので買う必要はない。大根が手ごろなものがほしかったのだが、地元野菜コーナーでは売られていなかったので、通常の1/2カットの物を買う。
玉ねぎもほしいのだが、新玉ねぎを買うか、普通のものを買うかで少し悩み、今回は普通の玉ねぎを買うことにする。
長ネギも高いのだが、今週は買う必要ないので値段で悩む必要がなく、今回は気楽でいいなと思う。
ソラマメが手ごろなものがあったので買ってみる。
そのまま焼いて食べるのが個人的には好きな食べ方なのだが、妻は嫌いなようで、結局は剥いて塩ゆでして食べることになるだろう。
レジで精算すると想定よりも安い金額だったので、気持ちよく次の店へと向かう。
次の店ではキャベツが、同じ値段だが大きさは大きかったので、先の店で無理して買わずによかったと思う。