興奮

僕が中学・高校生だったころガイドブックとしてバイブルに近かった石川喬司の『SF・ミステリおもろ大百科』の中で、筆者が競馬好きだったせいもあって一章を割いて紹介されていた競馬ミステリがある。その中でディック・フランシスの最高傑作として紹介されていた『興奮』なんだけれども、たしかに、紹介されたその内容を読んでみれば面白そうな物語ではあるものの、競馬に興味がなかったせいもあってか、とりあえず買ってみたもののそのまま積読で、本の山に埋もれてしまっていた。で、たまたま古書で安く売っていたので、今度こそはと思い買って読んでみたら、確かに面白かった。
もっとも、書かれた時代や翻訳された時代が時代だけに、古びてしまっている部分もあったけれども、文庫にして350ページと手頃な厚さで、興奮剤を使った形跡が無いのに馬が、興奮剤を打たれた時と同じような興奮をしてレースで一位になってしまうという謎解きも、それが現実的に可能かどうかは別として物語の中においては現実的なトリックであり、同時に読者も推測可能なレベルのトリックであるという点は石川喬司が傑作という理由もうなずける話だ。
さらには主人公の性格設定もストイックでハードボイルド的で、ある意味憧れる生き方でもあって、男同士の友情みたいな展開があったりと至れり尽くせりの描き方でもある。
ラストで主人公が選んだ結末は、登場人物の一人と結婚するという結末になるのかとおもいきや、ちょっと予想外の展開で、まあこれも悪くはないか。
もう少しディック・フランシスも読んでみよう。

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