単行本は買わなかったけれども、週間少年ジャンプに連載していた時には毎週楽しませてもらった車田漫画。
必殺パンチを食らった相手は必ず顔面から落ちるといったツッコミをいれたりしながらもなんだかんだいって『リングにかけろ』には楽しませてもらった。
『風魔の小次郎』も打ち切りとなってあの有名な「未完」という文字でラストを締めた『男坂』も楽しんで読んでいたし、『聖闘士星矢』も読んでいた。
乗りに乗っていた時期の車田正美の漫画は理屈ではない勢いとページをめくらせるだけの何かはあったと思う。
というわけで車田正美本人が描いた自伝漫画でしかも一巻で完結しているとなると読まないわけにはいかない。
が、実際に読んでみるとなんだかおかしい。最初の話からして、主人公たちが憧れているヤクザが警察に捕まり、そして今度は死刑を免れないという状況。それでもそのヤクザに憧れを抱く主人公たちに対して、主人公たちのことを心配する刑事は、ヤクザに対して、頼みごとをする。
その頼みごととは、警察署から刑務所に行く当日、主人公たちは必ず待ち構えて見守っているはずなので、その時に、死にたくない、死ぬのは怖いと無様な姿を見せてやってほしい。そうすれば彼らはヤクザに憧れるということをやめてくれるだろう。しかし、死ぬことなんか恐れてはいないヤクザは、そんなこと出来るわけがないと断る。
そして当日、主人公たちが見守る中でヤクザは無様な姿を見せる。
テレビドラマ『大岡越前』のエピソードにも似たような物があった。真似をしたとかそういうつもりはないのだけれども、自伝という体裁をとっていながらもフィクションの部分が多く、後半、主人公は作中のタイトルこそ違えども「リングにかけろ」を描き始める、しかし、描いている先は集英社ではなく秋田書店で、秋田書店であるからして担当の編集者も秋田書店の名物編集長、壁村耐三だったりもする。自伝ではなくフィクションとしてみれば綺麗にまとまっているだけにそこが惜しかった。
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