書店の新刊コーナーの平台に表紙を上に向けて置かれているのを見て、これは面白い小説なんじゃないかと久しぶりにピンときた。
もちろん外れることもあるけれども、外れてもいいかと思わせる表紙でもある。
もちろん初めて読む作家で、どんな話を書いているのかも知らない。
積読の本が多いので、こんな状態でさらに新しい作家の本を読もうとするのは自分でもおかしいんじゃないかと思うけれども、こういうときだけは自分の勘を信じて買ってしまう。
主人公は45歳女性、独身、そしてもうじき無職。
年齢こそは近いけれども、境遇は僕とは異なる。しかし、そんなに異なる境遇なのかといえば、それほど大差ないのかもしれない。
そう思うのはやはり、自分の可能性というものが少しずつ削り取られて、あるいは削り取って生きてきたせいもあるかもしれない。
可能性を無くしていった変わりに、ふてぶてしさと、たいして根拠のない自信は身につけていった。
悪意のある人物も登場するけれども名前がついている登場人物達は基本的に善人ばかりで、特に主人公格の三人は善人の完璧超人に近い。それが鼻につく人もいるかもしれないが、善人としては完璧であっても、人生の生き方は完璧ではなく不器用だ。
小説を読むということはもう一つの人生を生きるということだとすると、もう一つの人生を生きるのにふさわしいとも思える物語で、もう一つの人生を生き終えたあとで、現実の自分の人生に戻ってきたときに、苦しさや辛さを忘れさせてくれる。
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