宇宙探偵マグナス・リドルフ

国書刊行会のことなので、刊行予定としては上がっていてもしばらくは出ることはないだろうと思っていた<ジャック・ヴァンス・トレジャリー>シリーズの予定されていた一冊目が比較的あっさりと出た。
僕はジャック・ヴァンスのファンなので有無をいわさず買ったのだが、早く読みたいという気持ちと、読むのがもったいないという気持ちのせめぎあいがなかなか厄介なのだ。とはいっても結局は読むのだが、今回出たものは、ジョージ・R・R・マーティンがジャック・ヴァンスのような話が書きたくって、その結果オマージュとして<ハヴィランド・タフ>シリーズを書いてしまった元の物語、マグナス・リドルフが活躍する話を全て集めた本である。
これまで翻訳されたジャック・ヴァンスの作品は表面的にはシリアスな作品ばかりだったのだが、マグナス・リドルフの作品はどれもジャック・ヴァンス独特の笑いのある話ばかりだ。もっとも、ジャック・ヴァンスの他の作品もシリアスでありながらもひねくれたユーモアがあって、その部分に気がつくと楽しくって仕方がないのだが、マグナス・リドルフの物語は否が応でも笑える。
主人公のマグナス・リドルフというキャラクターが慇懃無礼で、表面的には礼儀正しい様に見えるのだが、実際はしたたかで、金にうるさいという性格に依存するところが大きい。
どのはなしも面白いのだが、「とどめの一撃」の犯行動機には驚かされた。これじゃあまるで京極夏彦の<百鬼夜行>シリーズで使われても不思議ではないではないか。

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