フリースタイル社が小林信彦コレクションというシリーズを出し始めた。
この本はその第一弾である。
小林信彦というと僕の場合は『地獄の読書録』が最初の出会いで、だから小説家としてではなく評論家もしくはエッセイストとしてのイメージが強い。その後『紳士同盟』や『神野推理氏の華麗な冒険』といったミステリ方面の作品を読むようになったけれども、代表作の<オヨヨ>シリーズや『唐獅子株式会社』などは手を出さなかったのは、その頃の僕はミステリかSF中心でそれ以外のジャンルはあまり手を出さ無かったせいだろうし、幅広いジャンルに手を染めている作者、とくに作家であり評論家であり、編集者でもあった才人でとらえどころが無かったというせいも多分にある。
が、今回『極東セレナーデ』を読む気になったのは江口寿史の表紙の影響が大きい。
江口寿史の表紙であるというだけで、読んでみたくなる。
内容はといえば、いわゆるシンデレラストーリーなのだが、短大卒で失業中の20歳の女性が一躍アイドルとして作り上げられてそして切り捨てられるまでの話だ。
1980年代なかばという時代を舞台として、その頃の時代を切り取って描いた物語なので、今となっては古びてしまっているかと思えばそんなことはなく、むしろ題材としては今でも通用するうえに古びている部分など何処にもないのは小林信彦の批評家としての視点でもってアイドルというものが描かれているからなのだろう。つまり書かれたものを無批判に信じているわけではなく、どこか客観的であり、突き放しているから今でも通用するのだ。
極東セレナーデ

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