薬剤師は消えていくか

人工知能が社会に進出して、無くなる職業というのが年に一回くらい話題になる。
僕はそういう人を不安にさせる技術の進歩に対しては否定する側なのであまり注意を払って見るということはしないのだが、たまたまその中に、薬剤師が入っているのを知った。
もっとも、これも記事によって異なる見方があるのだが、その一方で薬剤師という職業があまり知れ渡っていないという部分もあって、多分、薬剤師は人工知能に取って代わっても問題ないんじゃないかと思う人はけっこういるのではないかと思った。
確かに、薬局で処方箋を処方して貰いに行くと、たんに処方箋をもとに薬を袋に詰めて渡してくれるだけの人という印象が強い。
そういう点では薬剤師という職業はあまり知られていない職業の一つであり、もう少し、いやもっと薬剤師という職業がどんなことをしているのかということくらいは知られられてもいいのではないかと思う。
薬剤師の仕事の内容に関しては門外漢なのでここでは触れないこととして、それ以外の部分について少し考えてみよう。
日本の場合、薬剤師法というものがあり、原則として薬剤の調合は処方した医師もしくは薬剤師のみが行うことができると定められている。
人工知能が薬剤師に取って代わるためには薬剤師としての資格を有する、つまり6年間の薬剤師養成課程を修了したのち、国家試験を受ける必要があるのだが、なんらかの身体的機能を持たない人工知能のみの場合、これを満足させるのは不可能だろう。となると何らかの身体的機能、つまりロボットに人工知能を搭載させなければいけないのだが、薬剤を扱うために必要なロボットをまず、開発しなければいけない。
二本足歩行させる必要があるか、もしくは車輪歩行で大丈夫か、少なくとも薬剤を扱うためのマニュピレーターは必要だし、調剤に必要な機器は既存の人間が使っているものを使わせるのかもしくはロボット用に作られた機器を使うか、あるいはそういった機器はロボット本体に内蔵させるか、といった問題も発生してくる。そして一番の問題は身体的機能を持たせた場合、メンテナンスのための人間が必要になるということである。ロボット本体にかかるコストだけでなくメンテナンスにかかるコストも考慮しなければいけない。最低でも一年に一度くらいはメンテナンスは必要となるだろう。さすがにそこまでいくとどのくらいのコストがかかるのか、不確定要素が多すぎて簡単には答えを出すことができないので、ここでは思い切ってロボットという部分は考慮しないことにする。
人工知能のみの薬剤師として考えてみよう。
そうした場合、この人工知能を薬剤師として成り立たせるためには薬剤師法のほうを変えなければいけない。
つまり、処方できるのは薬剤の調合は処方した医師もしくは薬剤師、人工知能。とするのである。
では人工知能のみとなった薬剤師ができることはなんだろうかといえば、薬剤師の手助け程度である。
またいっぽうで、人の作ったインフラというのは案外もろいもので、大規模な地震が起これば電気は止まる。人工知能も動かなくなる。
仮に薬剤師という職業が全て人工知能に取って代わってしまったとした場合、大規模な震災が起こりインフラが止まってしまったようなことが起こればその時点で薬の供給も止まってしまう。実際に東日本大震災の時も、薬を病院まで届けたはいいものの薬剤師の不足で薬の必要な人に薬を届けることが危ぶまれたという問題も発生した。
人工知能によって、仕事の内容が変化していくということはありうるのだが、職業そのものを安易に無くしてしまうということは賢い使い方ではなく間違った使い方であり、その結果はいずれ自分に跳ね返ってくるのだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました