菜時記 水無月/己未

妻が統合失調症を発症し、入院し、そして退院後、一年半程は僕と一緒であればなんとか買い物に出かけることができた。
しかし次第に、人目が気になりはじめ、買い物に出かけることが困難になってしまった。
だからそれ以降は僕が日用雑貨を含め一週間分の食料を週末に一人で買いに行くようになった。
菜時記 水無月/己未
数日前から妻の機嫌が悪い。
心の病を患っている妻の場合、機嫌が悪いということはそのまま具合が悪いということであって、少しばかりまずい状況にある。
かといってすぐに何かできるのかといえばできるわけでもなく、自分自身が妻の感情に引き込まれないように努力するしかない。
そんな状況なので買い物に出かけたはいいけれども心が晴れるわけでもなく、何を買えばいいのかさえもままならない。
とはいえ、買わなければいけないものに関してはメモしてあるので、メモに書かれたものを淡々とカゴに入れていくしかない。
長ネギは2本で192円。次の店で買うことも考えたのだが、めんどくさくなってそのままカゴに入れてしまう。
キャベツは1/2カットで84円。悪くはない値段なのでかごに入れる。
南瓜が1/4カットで121円。アボカドは1個138円。どちらもこの値段ならば買っても良い値段なのでかごに入れる。そら豆があるかと思ったのだが、もう売られていない。つい先日初めて知ったのだが、そら豆の収穫時期は5月だけらしい。
今週はあまり野菜を買う必要が無いので魚介類のコーナーに行く。妻が好きなサンマの日干しが321円だったのでかごに入れる。
レジで精算するといつもよりかなり安い金額だったが、あまり心が晴れない買い物だった。

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