『髑髏島殺人事件』『まだ死んでいる』に続く第三弾。
今回はタイトルに殺人事件が付く。
今まで語り手だった滝沢紅子が不在で、今谷少年探偵団の面々が交互に語り手となる趣向となっている。さらにはそれぞれの章の後にある引用も単純な引用ではなく少しひねった形で引用してあったりと細部に手が込んでいる。
そんな感じで趣向は面白いのだが、では肝心の中身はというと、まず最初に四重密室殺人事件というこれまたとんでもない謎が提示されるのだが、この四重密室というのが少し曲者で、四重密の一つは糸を使った簡単な機械トリックでできる密室だったり、密室にする意味があるのかと思われるような密室だったりと、どんな構造になっている四重密室なのかが明らかになるにつれて思わず脱力してしまうような密室なのである。
一方、その事件と同時に発生するのがマンション内における爆弾騒ぎで、謎の人物からの爆弾を仕掛けたという電話がかかってくるという事件が起こる。
そういった事件が起こるなかで滝沢紅子の不在の謎というのが物語の背後にあり、謎は謎として存在しながらも、何が本当の謎、つまり解かなければならない謎なのか、という部分があいまいで、『まだ死んでいる』と同様、登場人物たちがそれぞれ勝手に行動している。そもそもというのもリーダー格であり今谷少年探偵団をまとめ上げていた紅子が不在だというのがその原因なのだが、モジュラー形式的に同時多発的に発生した様々な謎がやがては一つに収束していくあたりは手際が良い。
全体の構成を考えると、まとめ役である紅子が不在でなければ成立できないミステリでもある。
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