『水惑星年代記』のころは鶴田謙二と互換性のある絵柄だったけれども、そこから少しずつ変化をしていって、今度はバンド・デシネっぽい感じになった。バタ臭いというと聞こえは悪いけれども、カラー絵の色の塗り具合や使われている色など、器用に変化させるよなあと感心してしまう。
ここしばらく単巻が続いていたし、今回も同じ版元、同じ判型だったので1巻限りの物語だと思っていたら表紙にはしっかりと1という数字がナンバリングされている。
物語は長編ではなく舞台となる場所、登場人物は共通しているけれども毎回視点人物の異なる連作短編形式。
最初の話で活躍する人物が主人公かとおもいきや、あとの話では脇役に回ってしまう。
冒頭で登場した彼女は火星で長期滞在する旅行者向けのシェアハウスを経営している大家さんなのだが、裏の顔は賞金稼ぎで、本業のシェアハウス経営が儲かっていないので、その経営難を解決するために賞金稼ぎをしているという面白い設定でありながら、後の話ではあくまで大家さんという立場でしか登場しない。そのうち彼女が活躍する話が描かれるのかもしれないが、それは次巻移行に持ち越される。しかし、大家さんが活躍しないからといってつまらないのかというとそんなことはなく、なにしろシェアハウスなので、いろいろな人が集まり、様々な物語りが生まれていく。ほとんど使い捨てに近いくらいに登場人物は入れ替わり立ち変わり変わっていく。こういう展開もなかなかおもしろい。
どのくらい続くかはわからないが、次巻も楽しませてくれるだろう。
コメント