ともにがんばりましょう

これは面白いところを扱った物語だ。
舞台は大阪の新聞社。
新聞社を舞台とした物語となると、新聞記者が事件を調べるミステリ物かもしくは、新人記者を主人公にして新聞が出来るまでを描いたお仕事小説の類を想像するが、この物語はそんな手垢の付いたものを扱ってはいない。
なんと、労働組合を扱っているのである。
僕は労働組合があるような大きな会社で働いたことがないので労働組合というものに関しては知らない部分が多い。
が、僕の父は若い頃に自分の働いていた会社に労働組合が無かったことから仲間たちと一緒に労働組合を作ったことがある人で、ときどきその当時の話を聞かせて、というよりも無理やり聞かされたに近いのだが、何も無いところに労働組合を作り上げるということの苦労話を聞いたことがある。
父は板金職人で、ようするに物を作る人だったが、板金だけではなく労働組合も無かったので作ってしまったのだ。
つくづく作るのが好きな人なのだと思う。
父の若い頃というのは労働組合の力が強い時代だったが、だからといって簡単に労働組合ができるものでもなく、さらには会社からすれば目の上の瘤のような存在でもあるので、色々と軋轢があったようだが、そういった父の思い出ばなしを頭の片隅に置きながら読んでいくと、真剣に仕事をするのは楽しいと、つくづくそう感じる。
組合側は給料や待遇を上げろと言い、会社側は出来る限り経費は押さえたい。双方反する意見のぶつかり合いなのだが、ぶつかっていくうちにお互いの向かう方向が同じ方向へと向いていく。労働組合側の視点の物語なので、会社側はいわゆる敵だ。しかし、敵が必ずしも敵ではないのはこちら側の意見を真剣に受け止めてくれるからで、一方的ではないのである。
いつでもこういう仕事がしたいと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました