白暮のクロニクル 11

一巻から続いていた連続殺人事件、通称「羊殺し」の犯人および逮捕は前巻で行われ、実質的なクライマックスはこの最終巻ではなく前巻だったともいえるが、では犯人の正体がわかった後、単行本一冊を費やして何が語られるのであろうか、という期待に対して、そこで語られたのは「羊殺し」の犯人は一人ではなく共犯者がいた、ということだった。ここにきて何の伏線もなくいきなりそんな共犯者の存在を浮かび上がらせてさらに物語にどんでん返しを持ってくるというのは無茶なんじゃないかと思ったのだが、羊殺しの犯人に関わり合う人物の正体が判明した時、全て納得した。
そうか、この人物だったのかと。
物語が終わる前に、この人物に関するエピソードの一つぐらい描かれてもいいじゃないかと思ったことのある人物だったので、単行本一冊を通してこの人物に関して描かれて、満足した。
もちろんそれだけではなく、不老不死の種族であるオキナガと普通の人間とのかかわり合いにおける政治的な駆け引きといった部分もしっかりと描かれ、もうこれ以上言うことはないというような傑作だったのだが、最終話でさらに驚いた。
オキナガではない普通の人間にとってはオキナガという存在は自分の一生を通しての存在である反面、オキナガにとっては普通の人間とのかかわり合いというのは確実に訪れる別れであり、自分の人生の中の一瞬ともいえる存在だ。ただしその一瞬というのは数十年という長さであるのだが。
しかし最終話ではそれだけではない、もう一つのつながりというものを見せてくれる。
普通の人間もオキナガとは違う形で不死なのだ。

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