過去の作品のように世界がどうかなってしまったというわけではないので、とりたてて何かが変わったとか、変化してしまった原因や謎が解明されたというようなこともなしに物語は終わってしまった。4巻という長さはちょうどよかったのだろう。
もともと作者の作風からしてそういうものなので、雰囲気を楽しむ物語なのだから、それはそれでよいし、読む人を選ぶ作品でもある。
今回は主人公自身に秘密、といってもそれほどたいした秘密でもないのだが、日常の中で5分間だけこの世界とは異なる世界と触れ合うことができるという能力によって、主人公が垣間見た世界を描いている。5分間という短い時間なので、その異なる世界が自分のいる世界に介入してくることもなく、また主人公がその世界に介入することもなく、ただ、会合してそれで終わる。
だからなんなのだといわれれば言い返すことはできないのだが、しかし、日常の中での非日常、それも少し不思議という程度のものであり、それは本当に非日常ではなく、日常生活の中で、自分でも、そういう目を持てば見ることができるかもしれないと感じさせてくれる世界でもある。いいかえれば、主人公のような能力を持たなくっても、今生きている世界にも非日常を感じさせてくれることはいっぱいあるのだということを教えてくれる。
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