統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
いつになったら私は解放されるの?
と妻は僕に尋ねる。
妄想に取り込まれている以上、開放されることなど永遠にやっては来ないし、妄想を否定する形となる答えは妻には届かない。
これは答えを僕は知っていながらも答えてあげることの出来ない妻からの問いだ。
菜時記 神無月/乙丑
出かける前にチラシを見ると、最後に寄る店で駅弁フェアを行なっていた。
先月から妻の容態が不安定なので、少しでも妻の気分が良くなることを期待して、夕飯は駅弁にしようと言ってみる。
出来ることならば実際に店に行って食べたい物を選ばせてあげたいのだが、そういうわけにもいかず、チラシを見てどれが食べたいのか選んでもらう。
売り切れだった場合も考えて第二候補も選ぶ。
妻の食べたい弁当が売り切れてしまう可能性を考えると、寄る順番を変えて先に弁当を買ってしまうのがいいのだが、生憎と最後に寄る店は開店時間が少し遅いので、先に寄ろうとすると全体の時間が遅くなる。なので時間差を考えれば、テキパキと買い物をすればなんとかなるだろうと、いつもと同じ順番で回ることにする。
で、最初の店に入ると、いきなりここでも駅弁フェアを行なっていた。
ざと見て妻の食べたい駅弁はなかったので、そのまま先へと進む。
キャベツは先週とうって変わって1/2カットで55円。この値段の落差は何なのだろうかと思う。
南瓜は1/4カットで120円。しかし、一通り店内を回って戻ってみると南瓜が追加されていて105円のものがあったので交換する。
しめじは105円、少し高めだがこれは構わない。
ピーマンも5個で138円と高いがこれも仕方がないよなあ。
長ネギは2本で178円だったが、これは地元野菜の店で買う予定なので見送り、一通り欲しいものをかごに入れたのだが、いつになくかごの中身は少ない。
レジで精算すると異様に安い。
最後の店でもう少し買えばいいかと思い、地元野菜の店へと向かう。
ナスが2個で108円、胡瓜は3本で100円、長ネギは細いとはいえ3本で90円。妻の好きないちじくが8個で360円だったので買おうかと思ったら隣に半生ドライいちじくが270円で売られている。量は少ないが、半分に切られているので中身は保証済みだ。どちらを買おうか悩んだが、量の多い普通のいちじくを買う。
さて、今日の目的の店だ。
店頭にトマトが4個213円で売られていたのでかごに入れ、店内へ。野菜を一通り眺めつつ、駅弁が売られていないことに気がつく。ひょっとして間違ったチラシを見たのだろうかと焦りつつ店内の奥へと向かっていくと、あった。
妻の食べたがっていた駅弁も2個残っていたのでまずは確保する。さて自分の分だが、安くて量の多そうなものを選ぶ。
レジで精算すると意外と安く済ますことができた。変えって、今週分は大丈夫かと心配にもなるが足りそうもなかったら翌日に買い足しをすればいいかと思い帰路につく。
コメント