『夜想曲集』カズオ・イシグロ

いつもならばノーベル賞発表の時期になると村上春樹の話題が上がってくるのだが、今年は全然騒がれなかった。
そんなわけで、ノーベル文学賞のことも全然気にしていなかったのだが、カズオ・イシグロが受賞したので驚いた。
カズオ・イシグロはもうちょっと読まなければいけないなと思いつつも、『わたしを離さないで』しか読んでいない。
なんとなくだが、まだ読むには早い気がしてならない。読んでも、面白さを理解しきれないんじゃないかと思っているのだ。じゃあ『わたしを離さないで』もそうだったんじゃないかと言われると、そうかもしれない。ただ、『わたしを離さないで』はSF風味があったから読むことが出来たのだろう。
『夜想曲集』を読む。
五つの短編が収録された短編集だ。短編だったら読むことができるのかも知れないと思い読んでみることにした。
うーむ、短編なのになんという深みがあるのだろうか。登場する人物の人生の複雑さといい、物語の流れていく流れ方といい、一筋縄ではいかない。
読み始めた物語がどんな形で収束するのか、その期待感はある意味ミステリの謎解きに近い。生きていくことの複雑さを感じさせる。
そして、登場人物達はなんらかの形で音楽に携わっている。そのせいか読んでいて物語の背後につねに音楽が流れているかのような錯覚さえ感じさせる。読み終えた今も、読んでいる最中ずっと音楽が流れていたんじゃないかという気がしてならない。

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