ゴッド・ガン

根っからのSF好きにしかおすすめできないベイリーの短編集。
いろいろな問題があって本国のイギリスでもベイリーの短編集は生前は2冊しか出なかったということだ。そのあたりのことは解説に書かれているのでそれはさておいて、本国でも2冊しか出なかったベイリーの短編集が、日本でも日本版オリジナルとはいえどもまた出た。これで2冊目であるので本国と並んだ。
この世は「光あれ」ということで光から作られたのであればすべての諸元は神も含めて光であり、この光を使えば神を殺すことも出来るだろうという屁理屈が楽しい表題作「ゴッド・ガン」から始まり、不老不死の秘密を手に入れようとする男と不老不死の秘密を守ろうとする異星人とのものすごく長い年月の顛末を描いた「邪悪の種子」まで読んでいて楽しい。もっとも物語は必ずしもハッピーエンドに終わるわけではないのでそういう意味ではまったく楽しくない話ばかりでもある。
こんな変な話ばかり描いていたのであればまともなSFなんて書けないだろうなと思わせる反面、こんな変な話ばかり書いてくれてありがとうという感謝の気持ちで一杯になる。
あまりにも価値観が違いすぎて接触禁止扱いとなっている異星人に対して仲間の命を救うためにあえて接触を試みる「ブレイン・レース」などは、相手の異星人の考え方がどことなくジャック・ヴァンスっぽさが見えるけれども、その味わいはまったく異なる。ジャック・ヴァンスも登場人物たちをひどい目に合わせるけれども、ベイリーの場合はどことなく悲哀があって、ヴァンスほどカラッとしていない。そのあたりがイギリス人らしさが現れているのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました