火星の白蛇伝説 – 星界伝奇

文庫にして210ページほどの薄さだったので手にとってみて驚いた。
長編ではなく、主人公を同じとした連作短編で、物語そのものよりも雰囲気を楽しむ作品だ。
それというのも、主人公の名は素密素と書いてスミスと読ませる。そして字(あざな)は乾。北西を意味する。
と、ここまでくればC・L・ムーアのノースウェスト・スミスをもじっていることはわかるし、蛇不老と書いてシャンブロウと読ませる生き物も登場する。もちろんスミスの相棒、ヤロールも活躍する。
そんなわけで、第一話は「シャンブロウ」そのもので、川又千秋による翻訳ならぬ翻案だ。
第二話以降はところどころで<ノースウェスト・スミス>シリーズを彷彿させるものが登場するけれども、武侠小説っぽさや、その他もろもろの要素があからさまに投入され、書いた本人自体が楽しんでいる雰囲気も伝わってくる。
残念なのは、そういった面白そうなものが雰囲気だけ匂わせたままで、いわばお披露目レベルで終わってしまって、そこで途切れてしまっている部分だ。
雰囲気を楽しむものだからそういうものだということかもしれないが、続きが気になるという点では不完全燃焼気味でもある。

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