BEAST COMPLEX

雑誌は読んでいないので知らなかったのだが、『BEASTERS』が始まる前から『BEASTERS』の物語は描かれていて、ディズニーの『ズートピア』という映画が公開される前から肉食動物と草食動物とが共存する物語は始まっていた。
短編集なのだが、どの話も『BEASTERS』と同じ設定の物語で、基本的には捕食する側と捕食される側とのかかわり合いの物語だ。そして学園が舞台もあればそうではない、つまり大人が主人公の物語もある。その点でいえばBEASTERSよりも振り幅が大きく、世界の広さを感じさせる一冊である。
学生が主人公の物語は『BEASTERS』の世界と同じ味わいがあるのだが、学生が主人公でない話になると『BEASTERS』では味わうことがなかった雰囲気になる。端的に言えばハードボイルドなのだ。
カンガル―の中年男性が営んでいる安ホテル。そこに一匹の黒豹の少女が宿泊にやってくる。安ホテルであるうえにお客も少ないこのホテル。どの部屋も選び放題なのだが、彼女は一番目立たない部屋を希望する。
いわくありげなのだが、そこは宿屋の親父である。客のプライバシーまでは立ち入らない。
しかし、その一方で彼は草食動物であり、彼女は肉食動物である。建前上はどちらも対等であるのだが、実際は肉食動物が建前を無視すれば彼は食い殺されてしまう存在だ。
草食動物と肉食動物、大人と子供。この二人の関係がなんともいえない雰囲気を醸し出している。

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