本で床は抜けるのか

こんな本が出ていたとは知らなかった。文庫化されたので初めて気がついたのだが、文庫化されなかったら気がつかないままだっただろう。
僕の趣味は読書なのだけれども同時に本を集めることも趣味といってもいい。
最初は、読みたい本があるから買う、そして読む。そこで終わりだった。
読み終えた本はそのまま本棚に入れておく。
それが当たり前のことだと思ったし、そもそも本棚というのは本を入れておく棚なのだ。読み終えた本を置くのは当然で、そこから先はなにもない。
そんなことを続けていけば必然と本棚の空きスペースはなくなり、新たに本棚を追加するか、それとも部屋の空いた場所に置くかどちらかしかない。
捨てたり売ったり、あげたりという選択肢はない。
そもそも、昔は近所に売り先がなかったし、同じ趣味の人間もいなかったのでもらってくれる人もいない。捨てるなんてもってのほかである。
とそんな日常を送っているといつの間にか本は増え続け、それでも僕は平気だったのだが、親が心配し始めた。
床が抜ける。
それでも、本と同居している生活の中で、僕はそんなことなどあったとしてもまだまだ先の話だと思っていたのだが、親に押し切られる形で、庭先にプレハブの小屋を建ててそこに本を置いておくことになった。
そうなったらこっちのものである。
床が抜ける心配などする必要もなくなった。
のだが、プレハブの小屋の空きスペースも少なくなっていった。
さすがにそろそろ自分も考えを改める必要が出てきたというか、増え続ける本に家人があまり良い顔をしない時が出始めて、電子書籍で買うことのできる本は電子書籍で買うという方法を取ることにした。電子書籍で買うことのできない本だけは紙の本を買うのである。
この本の著者は僕と同じように床が抜けるかも知れないという状況と家人からの非難の目という二重苦を体験した人なのだが、僕よりも不幸である。
この本を読んでいかに自分が幸運だったのかと再確認をしたのだが、だからといって本を買うことをやめるつもりは今のところまったくない。
本を読むということは、その本を手に入れて、そして読んで、手元に置くという一連の行動全てを指しているのだと思う。
読み終えた本からも得るものはある。
でもまあ、そこまでして本を読めとは他人には言わないなあ。

コメント

  1. 西牟田靖 より:

    拙著を発見してくださり、大変光栄です。ありがとうございます。

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