マニアックで個性的な映画を撮る監督が好きだ。
ジョン・カーペンター監督もその一人で、久しぶりに『ニューヨーク1997』を見かえした。
カーペンター監督というとこの作品と『遊星からの物体X』がおそらくは一番有名な作品なのではないかと思う。映画としての完成度としてみれば『遊星からの物体X』の方が数段上なのだが、かっこよさという点では『ニューヨーク1997』の方が数十倍上である。
物語は1997年のニューヨーク。今となってはすでに過去の話なのだが、映画が公開されたのは1981年。公開時は16年先の未来の話だったのである。
その時代、アメリカの犯罪発生率は400%を越え治安は絶望的に悪化した。そこでマンハッタン島を高い壁で囲み、島そのものを刑務所とすることにした。もちろんそれだけ広大な場所を規律統制できるはずもなく、島の内部は囚人たちによる無法地帯と化している。そんなある日、大統領の乗った飛行機がハイジャックされ、大統領は一人、脱出カプセルに乗り脱出をしたのだが、カプセルはマンハッタン島の内部に着地し、囚人たちによって誘拐されてしまう。
何よりも、配役が素晴らしい。
主人公はカーペンター監督の常連ともいえるカート・ラッセル。
大統領役にドナルド・プレザンス。そして主人公が危機に陥ったときに狙ったようなタイミングでやってくるタクシーの運転手にアーネスト・ボーグナイン。警察本部長役には西部劇で有名なリー・ヴァン・クリーフと登場した瞬間に思わずニンマリしてしまう。
しかし、配役は素晴らしいのだが、物語の方は魅力的な設定のわりにはいい加減な部分が多く、重要そうな雰囲気で登場する人物はあっさりと死んでしまうし、主人公もあっさりと敵に捕まってしまう。大統領を助け出すためのタイムリミットが24時間であるのに、主人公は10時間くらいは気絶していて物語における時間配分が適当すぎる。さらには終盤になると主人公の味方が次々とボロ雑巾のように死んでいく。それも見せ場も何もなく死んでいくのである。いままであれほど活躍していたのにそんなにあっさり死なせてしまってよいのかと突っ込みたくなる。
そして、最後は主人公とラスボスとの対決かと思いきや、ラスボスは助け出された大統領に撃ち殺されておしまいなのだ。大統領も大統領でトチ狂ったかのような叫び声をあげながらマシンガンを乱射してラスボスを殺すのである。まあ、それまでラスボスにひどい目にあわされていたのだから気持ちはわかるけれども、それでも大統領である、それまでは人格者っぽい佇まいをしていたのだから威厳を見せてほしかったよ。ドナルド・プレザンス。
しかし、それでもこの映画が魅力に満ちた映画になっているのは、駄目なところはあっても抑えておくべきところはしっかりと押さえてあるからなのだろう。
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