恋は雨上がりのように

さえないファーストフード店の中年店長に恋をしてしまった女子高生。
彼女は陸上選手だったが怪我で走ることができなくなってしまった。
目標を失った彼女の前に現れたのがさえない中年店長。彼女は彼に近づくために彼の店でアルバイトを始める。
前巻で、二人がそれぞれ自分の目標、彼女の方はふたたび陸上選手として走ることを考え始め、店長の方は小説を書き始める。
二人の、進展しそうで進展しないもどかしい恋のエピソードは息を潜めはじめ、物語が方向転換をし始めたことに多少の不安があったが、この巻で完結ということを知って、ああ、なるほどそういうことだったのかと納得する。
バツイチで子持ちの中年男と女子高生の恋愛がうまくいくのかといえば、うまくいくように描くことも可能ではあるが、そうなってしまうとそれはファンタジーであって、そういうファンタジーの物語が読みたかったのかといえばそういうわけではない。
人を好きになる気持ちとそこから先、どうするのかということは連続的なつながりではなるけれども、違う領域なのである。
彼女の一途な行動はいじらしさを見せるのだが、一方で店長の方はといえば、これまたいじらしい。
年齢差という決定的な違いの部分において、店長は自分が彼女と同じ高校生だったとしたらと妄想するのである。
で、その結果、彼女の自分への思いを断ち切らせる。
それは、彼女の恋は走るという行為を失った代償としての恋でもあり、走ることを取り戻せばこの恋はきえてなくなるのだ。
そう、彼女に理解させる。
いい男だなあ、店長は。
さえない中年男だけれども。

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