先生とわたしのお弁当 

ここしばらくはファンタジー寄りの物語を書いていた田代裕彦の新作。
角川文庫から復刊した『平井骸惚此中ニ有リ』も全五巻全部復刊するかと思いきやあまり売れ行きが芳しくなかったようで一巻のみで終わってしまい悲しいものがあったが、それでも一年に一作ペースくらいで新作を発表してくれているのでファンとしては嬉しい。
そして新作はミステリに舞い戻ってきたわけだが、今回は日常の謎系の話である。
探偵役とワトソン役は<痕跡師>シリーズを彷彿させるキャラクター造形なのだが、それはさておきタイトルにある通り、お弁当に関わる謎を解く話である。
日常の謎なので誰かが殺されたり怪我をしたりといった殺伐な展開はないのだが、先生が解き明かす真相は決して甘いものだけではなく苦い思いを、つまり知るということはそれなりの覚悟が必要で、受け入れる覚悟なければ闇雲に関わるべきではないということを突きつけてくる。
三話からなる連作短編でそれぞれの話で完結しているのだが、物語全体、つまり、第一話でさり気なく登場したエピソードが最終話で再び登場し、その真実の姿が明らかにされたりするという細部まで丁寧な構成の物語で、先生と生徒という二人のコンビの物語はいくらでも続けることができそうなのだが、このまま続けるのは蛇足というものかもしれない。

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