メタモルフォーゼの縁側 1

3年前に夫を亡くして以来、自宅で書道教室を開きながらも気ままな一人暮らしをしているお婆さん。
ちょっと涼みに立ち寄った書店で書店員のおすすめと書かれたPOPをたよりに偶然手にとった漫画にハマってしまう。
その漫画はBL物、ボーイズ・ラブ。男の子同士の恋愛を描いた漫画だった。
続きが気になったお婆さんは次の日、早速2巻目を同じ書店に買いに出かける。
書店で対応してくれたのはアルバイトの高校生の店員さん。この店員さんも密かにBL物が好きで、さらにお婆さんの買った漫画のファンで、丁寧に対応してくれる。しかし、極度の人見知りでバイト先では大丈夫なのだが、学校ではクラスメートには話しかける勇気がもてず、一人っきりで過ごしている毎日。唯一の例外は近所の幼馴染の同級生だけだ。
そんな二人が一冊の漫画がきっかけで、漫画の話をするようになっていく。
ああ、いいなあ、こういう感じ。
僕も漫画を含めて本が好きなのだが、周りに同じような人がほとんどいなかったので、本の話をするということがあまりなかった。学生時代はそれでも本の話をすることができたのだが、卒業して社会人となると、まったくいなくなってしまった。本以外の共通の話はすることはできるけれども、本に関しての話はする相手がいない。
まあ、もともとそういう機会が少なかったので、無くなってしまってもそれほど影響はないのだが、それでもそういう話をする相手がいれば嬉しい。
ということで、BLには興味はないのだけれども、この二人の気持ちというのはよくわかる。
特に、お婆さんが好きになった漫画が次の巻が出るのに1年半かかっていることから自分の残りの人生が10年ほどだとすると、あと6巻くらいしか読むことができないとがっくりする一方でもう少し長生きしようと決心するエピソードなど、そろそろ僕もそんな年代にさしかかるのだよなあと思うと、じわりと来るのである。

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