孵化

我が家はそこそこ田舎なので、窓や扉を開けっ放しにしているわけではないが家のなかにいろいろな虫が入り込んでくる。
だからといって慣れるわけでもなく、天井から10cmくらいのムカデがポトリと落ちてきたりするとびっくりする。これがヤスデならばまだ可愛げもあるがムカデともなると噛まれるとひどい目にあうので安心できない。
もっともムカデやヤスデ、ゲジゲジはたまに現れる程度なのでまだいいが、アシダカグモはしょっちゅう見かける。我が家に居候しているかのような感覚である。しかしアシダカグモは益虫でゴキブリなどを食べてくれるので見かけてもそっとしておくのだが、逆に言えば我が家にずっといるということはゴキブリもどこかにずっと潜んでいるということでもある。
その証拠にたまにゴキブリも見かけるので、見かけるたびに、アシダカグモに対しておまえはもうちょっとは働けよと心の中で文句を言う。
数週間前に仕事から帰ってくると妻が、洗面所にいるクモが白い座布団のようなものを抱えていると言った。
風呂に入るときに天井をみるとたしかにアシダカグモが白い塊を抱えている。卵嚢だ。
生まれてこのかた、実際にクモが孵化した場面を見たことはないのだが、蜘蛛の子を散らすという言葉がある。
どのくらいのクモが孵るのかはわからないが、家の中で孵化したところを想像するとちょっと嫌だなあ、と思いつつ、かといって無意味に殺生をするつもりはないので、孵化するのなら家具の後ろとか見えないところで孵化してほしいなあと思ったりして、結局何もしないまま日々が過ぎていった。
で、数日前、風呂に入ろうとしたら天井から小さいクモが降りてきた。
天井を見てもその降りてきたクモしかいなかった。
どこかで孵化したのだなと思いながら、振り返って洗面所の扉を閉めようとして扉の上を見たら卵嚢があった。その周りに100匹程度の小さなクモがいる。
思っていたほどおぞましい光景でもなく、手を近づけても逃げようとしない。ひょっとして孵化したものの大部分は死んでしまっているのではないかと思ったりもしたのだが、どうやら動かないだけで生きているらしい。
とはいえど、こんなに小さいと天井付近にいるぶんにはまだしも床の上を歩かれるとうっかり踏み潰してしまいかねない。
というわけで、天井から糸で降りてきたクモを捕まえては窓をあけて外へ出してやるということを繰り返している。

コメント

  1. natsuzo より:

    私は想像しただけで鳥肌が・・・

  2. Takeman より:

    アシダカグモは臆病なのでそのあたりも含めて、なれてくると案外可愛いものです。

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