菜時記 文月/乙巳

統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
いつか妻と一緒に買物に出かけることができる日が来ることを夢見ているが、同時にそれは僕にとって贅沢な願いであることも理解している。
菜時記 文月/乙巳
今週は先週の残りがわりとあるので、買わなければいけないものが少し少ない。
キャベツが一玉105円だったので悩むことなく買うことにするが、こういう場合悩むのはどれを選ぶかだ。
もっとも、どれを選んでもそれほど大差はないと思うのでざっと見てきれいなものを選んでかごに入れる。
長ネギは2本で170円と先週と同じなので悩むことなく買う。
地元野菜コーナーではとうもろこしが3本で270円。種類はゴールドラッシュで、細目のものだったが、この値段ならば失敗しても納得できるかと思い買うことにする。
ほうれん草は高くなってきたので代わりにちんげん菜を買う。こちらは二株で105円。
枝豆が217円、アボカドが大玉で138円でそれほど熟していないものがあったので買うことにする。
レジで精算すると予想通りいつもよりも安いので、納得して次の店へ。
次の店ではいつもどおり、トマトを買う。いつものものではないけれども、それでも4個で213円。
きゅうりが3本で95円と安いので買う。
鰻もどきの、うな次郎が289円と安かったので買うことにする。
一年に一回くらいならば鰻を買ってもいいかもしれないが、妻が鰻が苦手なので一人だけ食べるというのは気が引けるし、鰻も絶滅危惧種となっているので、それを思うとさらに食べるに気が引けてしまう。
そもそも、鰻を食べなければ死んでしまうというわけでもないし。

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