そのたくさんが愛のなか 3

残りの人生を引き算で考える病気にかかったのさ。

吉田聡も歳をとったんだなあ。
といってもこれは全然悪い意味ではない。
昔の吉田聡の漫画の主人公は若かったけれども、だんだんと主人公の年齢が上がってきた。それは多分作者自身が歳をとって、歳をとった人物を描くことができるようになったからで、そういう意味で、吉田聡も歳をとったんだなあということである。
この本の登場人物も皆、歳をとっている。中年オヤジである。
さらにいえば人生の成功者でもない。主人公自身が早期退職して地元に帰ってきた冴えない無職のオヤジだ。若い頃はいろいろと夢や希望に満ち溢れていたけれども、いつしか現実を生きていくという、ただそれだけの事柄に夢も希望も持つことを止め、ただ生きていくだけの人生になってしまっている。もちろんそれが悪いわけではない。そういう生き方だってありなのだ。でもその一方で、そういう生き方だけしかできない人間になってしまったのかというとそうでもなく、いつだって気持ち次第で違う生き方をすることができる。
吉田聡の漫画はいつだってそういう漫画だった。
これまでは主人公が若かったので若ければそういう生き方もできるけれども、歳をとってしまうと、ちょっとやっぱりそれは無理なんじゃないかという気持ちにもなってしまうこともあったけれども、この漫画を読むと、年齢なんて関係ないのだと、元気をあたえてくれる。

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