『ジャガー・ハンター』ルーシャス・シェパード

『竜のグリオールに絵を描いた男』が出たのでさっそく読み始めたのだが、表題作は過去に読んだ記憶があるのに読んでみるとどうにもこんな話だったのかと記憶がない。
ということで、この本を読む前に先に積読のままになっている同じ作者の『ジャガーハンター』のほうを読むべきなんじゃないかと思い、本棚から引っ張り出してきて読み始めた。
最初の話は表題作でもある「ジャガー・ハンター」
舞台は南米のとある町。奥さんがテレビを買うという無駄遣いをしてしまったために家計が火の車になること必然という状態に悩む主人公。テレビを返品しようとするけれども家電屋の男は返品を受け付けてくれない。窮地に陥るところで家電屋が相談を持ちかけてくる。最近、自分たちを悩ましている黒いジャガーを倒してくれればテレビの代金はチャラにしたうえでさらに報奨金もあげると。主人公は元優秀なジャガー・ハンターだったのだ。
という話なのだが、南米を舞台にしているだけあってマジックリアリズムの世界へと結びついていって面白い。
「黒珊瑚」は「竜のグリオールに絵を描いた男」とちょっと設定が似ていて「竜のグリオールに絵を描いた男」は竜が自分の周りの人間に影響を与えるという設定に対して、こちらは精霊が影響を与える。しかも精霊は宇宙人らしい。
「ある旅人の物語」は「黒珊瑚」と同じ世界で、こちらは宇宙人がとある島に遭難して精神共生体となってサバイバルをしているという話。設定そのものはありふれているけれども、描き方が面白い。
「メンゲレ」はナチスの医師メンゲレが南米に落ち延びてそこで秘密の研究をしていたという話なのだが、これも語り方が面白い。
しかし、一番面白かったのは「スペインの教訓」
作者自身の自伝的な物語として話が進んで、フィクションではなくノンフィクションなのかと思っているとナチスの影が登場してきて、ようするに現実の世界に虚構の世界が入り込んでくるという構図になっている。

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