『悪の猿』J・D・バーカー

一人の男性がバスに跳ね飛ばされて即死する。
これだけだったならば単なる交通事故で終わってしまうはずだったが、一つ違っていたのはこの男が小さな箱を持っていたことだった。そしてその箱の中には切り取られた耳が入っていた。男は五年前から定期的に殺人を犯していたシリアルキラーだったのだ。
と、強烈な冒頭のつかみから始まるこの物語はジェフリー・デーヴァ―絶賛ということだったけれども、スティーブン・キング絶賛はあてにならないけれども、デーヴァ―絶賛ならばあてにはなるなあという面白さだった。
死んだ男が持っていたのは箱の他に日記が一冊。それは男の子供の頃の日記のようで、物語は警察側、日記、そして犯人に監禁されたままの少女の三つの物語が交互に語られる。特異なのは日記の内容で、一組の夫婦とその息子、幸せそうな家庭の話で始まりながら次第にその内容はいびつになっていく。この日記の内容がとにかく面白くって日記のパートだけまとめて読みたくなってくる。一方で監禁された少女のほうは痛々しい内容だが、それほど新味でもない。警察側のパートは類型的だけれどもしっかりとキャラクター分けされて描かれている主人公たちの言動は明るくユーモアがあって、他のパートの陰惨さをよい意味で消し去ってくれる。
特に、終盤において主人公は自宅で犯人に包丁で刺されて入院という事態になるのだが、見舞いに来た相棒に気分はどうだと聞かれると、うちの包丁で刺された気分だよと答えるのだ。切り返しがうまい。
デーヴァ―絶賛なのだからどんでん返しの連続だろうと想像するけれども、その点においてはそのとおり。
デーヴァ―とは少し異なるタイプの返しを次々と放ってくるのだが、メインの事件とは別にもう一つ別の仕掛けが仕組まれていて、それが判明する中盤は思わず泣けた。その仕掛けにノックアウトされてしまったので一生ついていきますといいたくなるほどだったのだが、次回作はどんな話になるのだろうか。

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