暗くて静かでロックな娘
ホラーやグロテスクな物語は好きではないのだが、平山夢明の場合はホラーとかグロテスクといったものだけではないものがあって、それは要するにSF的な部分になるのだが、その部分だけを読むためにそれ以外の嫌いな話も読むということをする羽目になるというのが僕にとっての平山夢明の読書だ。
今回は残念なことにSFよりの話がまったくない。かといってハズレをひいてしまったのかというとそんな気持ちにもならない。
殆どの話で、ダメ人間ばかりが登場し、読んでいてゲンナリというかどんよりというか、登場人物に幸せが訪れることはなくって、後味は悪いのに、読後感はそれほど悪くはない。「おばけの子」を除いてだが。
「おばけの子」は児童虐待を扱った話で、読んでいて陰鬱というか、読むのが辛く、ハッピーエンドにならないことも予想がついて、どうしてこんな物語を読まなければいけないのかと思うくらい辛い話なのだが、最後は美しく終わる。しかし美しく終わるので余計に辛くなる。
この話の前の話が「チョ松と散歩」という話でこれは少年たちの夜の冒険といった、なかなか良い話で、それでいて途中から悲しい話に切り替わってしまうのだが、それでもラストは余韻のある良い話に着地しただけあって、その後にこの「おばけの子」を読まされるのだから辛さも倍増する。
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