なんかいいな。
そんな気持ちになることができる漫画だ。
世の中には音楽をあつかった漫画はたくさんある。音を出すことのできない漫画という手法で音を扱うというのはそれだけでハンディを背負っているのだが、音楽をあつかった漫画を読んでみると実際はそんなにハンディでもない。絵で音を表現するというのは不可能ではないのだということを実感させてくれる漫画が多い。
一方で、音楽を扱った漫画の場合、主人公は音楽で一流になる、あるいは賞を取るといったことを目指すことが多い。物語としてはそれが王道だろう。しかしこの漫画はその点において少し異なっている。
主人公は音楽が好きなのだが、あくまでそれは自分のためだけなのだ。自分の音楽で有名になるとか、一流になるとか、賞を取るとか、メジャーべビューするとか、そんなことは考えない。
マンションの管理人として働いて、そして仕事が終われば自室で自分のために音楽を作り、そして自分のために演奏をする。
そこに他人に認められたいという承認欲求というものは存在しない。
自分を満足させることができるものがあるという自給自足、他者を必要としない自己完結の人生というのはある意味理想的でもある。
もちろんそれだけで物語ができあがっていくというわけではなく、他者との関わりの中で主人公は自分の音楽を他者に演奏するということをし始めていくので、2巻以降はこれまでの漫画と同じ方向に向かっていってしまうのかもしれないのだが、それでもこの漫画がこの1巻でみせてくれたこの世界はそれだけで良いものを見せてくれてありがとうという気持ちで一杯になる。
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