『零號琴』飛浩隆

<廃園の天使>シリーズの長編二作目を待っていたらとつぜんSFマガジンでこれが連載されて、単行本としてまとまったら読もうとのんきに思っていたら連載が終わっても一向に単行本の出る気配もなく、もともと寡作な人なので本業のほうが忙しいのだろうと思っているとそのわりには短編は発表しているので、そちらのほうを読んでいたりしているうちにすっかり忘れてしまっていた。
そうしたらいきなり出たのである。
雑誌連載のときも読まずにいたので全く予備知識はなくどんな話なのかもわからない。ちらほらとネット上で見かける情報からすると娯楽に振った作品のようでそれはそれで楽しみだった。
で読み始めてみると、冒頭からいろいろと思わせぶりな展開が続き、美縟とか假劇とかちょっと読むのに苦労する漢字を当てはめた言葉が出てくる。それと同時にところどころで過去のSF作品やアニメ、漫画、特撮番組を彷彿させるものが登場する。地の文はシリアスでいつもの飛浩隆の文章だけれども、会話はくだけた調子で、作者がやってみたかったものすべてを突っ込んだという感じに近い。
それだけに、さすがにちょっとついていけないなあと思う部分や、圧倒されて何がどうなっているのかよくわからない部分とかもあったけれども、面白かった。
ラストでは舞台となる都市が崩壊し、脱出した人々の様子が描かれるのだが、小松左京の『日本沈没』のラストと重なった。ひょっとしてこれも織り込みずみなのかな。

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