『2年8ヶ月』てらだこうじ

書店で見かけて気になったのだが、出版社を見ると青林工藝舎で、相変わらずこの手の漫画に惹かれる確率が高いなあと思いつつ、全く知らない作者だし、どんな内容なのかも知らないのでとりあえずネットで調べたら作者のサイトがあって第一話が試し読みできる状態にあった。
第1話目の試し読み
姉弟によっておばあさんとおじいさんが真っ二つになってしまう話だ。おばあさんは上半身と下半身に分かれ、下半身は何者かに殺されてしまう。そして数カ月後に上半身のほうも死んでしまう。おじいさんは左右に分かれでしまうのだが、右半身のおじいさんは右脳だけになってしまったので芸術の才能が開花され、左半身のおじいさんは左脳だけなので論理的になってしまう。で、どちらの半身も数カ月後に死んでしまう。
まったくもって僕好みの話だ。
とここまではいいのだが、この本がこの手の話を集めた本なのかというとそうではないところが悩ましいところで、こういう話が続くと思いながら読んでいくととんでもないところに連れて行かれてしまう。
実際にあった出来事かと思いきやそれは登場人物が描いた漫画の話で、そうかと思いきやそれさえも登場人物が描いた漫画の話で……と延々とその繰り返しをメタ的に行う話があったり、それぞれの話は第一話に登場した姉弟が主人公としているので、それぞれが繋がりを持っているかのようにみえながらも繋がっているようで繋がっていなかったり、あるいはその繋がりが全く説明のないまま投げっぱなしにされていたり、思いっきり思わせぶりな展開をしておきながらも、それに対して期待する読者を置き去りにして突き進んでいく。
次第に登場人物たちは哲学的な内省をし始めて、いうなれば『エヴァンゲリオン』の最終回を見ているかの様相を示してくるのだが、最後は、そこにくるのかと突っ込みたくなる地点に着地する。
この結末を考えると、それまでの展開の全ては納得するというかせざるを得ないわけで、してやられたという気持ちだ。
次回作が楽しみである。

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