『死と砂時計』鳥飼否宇

世界中から集められた死刑囚を収容する監獄が舞台。
もちろんそんな刑務所が実在するわけではないので、その監獄があるのはとある中東の架空の小国であり、その小国は石油の産出国であるが、石油に変わるビジネスとして世界中から死刑囚を受け入れ、そして刑の執行を代行するというビジネスを始める。
人権的な問題によって先進国では死刑の執行が難しくなってきたところに注目したのである。
なかなかおもしろい設定なのだが、面白いのはそんな設定の部分だけではない。
この監獄の中で不可思議な5つの事件が起こる。実際は6つの短編からなる連作短編集なのだが、最後の話はこれまでの語り手自身の物語であり、この監獄の物語を総括する話でもあるので不可思議な事件は起こらない。
さて、どんな不可思議な事件が起こるのかといえば、この監獄では死刑はこの国の首長によって決められるのだが、その基準は不定で、入所してすぐに刑が確定する場合もあれば、数十年経っても刑が確定しない場合もある。
刑が確定された場合、その死刑囚は確定囚となり、独房に入れられ、四日後に刑が執行される。
そんな中、翌日に刑が執行される予定だった確定囚が刑の執行前日に、何者かによって独房内で殺されるという事件が起こる。
誰が殺したのか、そして翌日まで待てば死ぬ人間を何故殺したのか。
魅力的な謎である。
そしてその謎を解くのは、長老と呼ばれる一人の老人。
語り手はその老人を師と敬う青年。もちろんどちらも監獄内の人間なので死刑囚である。
そして最後の物語は語り手自身の物語であり、この監獄に関する物語であり、その結末は皮肉に満ちている。

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